2025年2月5日(水)
膝の痛みの原因がわからず悩んでいる患者さんへ
あちこち病院に行って,レントゲンに加えてCTやMRIも撮ったけど原因がわからないと,来院される患者さんがかなりおられます.特に膝の前の痛みが多いです.
これらの患者さんで,痛みの原因として,実は骨の形状に起因するものと,膝関節の動揺性が関与するものが多いです.ですから,CTやMRIを撮っても,異常ないと判断される事が多くなります.MRIは万能ではありません.
まず,骨の形状ですが,当院ではきちんとした膝の正面像,膝屈曲90度でのきちんとした側面像,そして,膝蓋骨の軸写像を撮影します.適当にレントゲンを撮像しますと全く骨の形状の評価ができず,痛みの特定にも繋がりません.また,特に膝蓋骨の軸写像が大事です.原因のわからない膝の痛みの半数以上で,膝蓋骨が関係していると言っても過言ではありません.人それぞれ,膝を構成する3つの骨,大腿骨,脛骨,膝蓋骨の形状が全く異なり,その形状のために痛みが起こっている事も少なくないのです.大腿骨や脛骨の形状は,膝蓋骨の形状にも影響を与えています.当院ホームページの中で,“膝関節を中心としたスポーツ整形”の項目があり,そのPDFをご覧いただきますと,各種レントゲンの評価方法を載せてあります.
https://nagamineclinic.jp/sports/
最も多いのが膝蓋骨と大腿骨の形状の適合性が悪い膝です.膝蓋骨は種子骨と言って,膝を伸ばす力が最大になるように形成された骨です.ですから膝蓋骨の形状が悪かったり,上下の位置がずれていたりすると容易に痛みがでてきます.適合性が悪い膝では,スクワットをすると痛みがでてきます.健康のために始めたスクワットが,膝の形状によっては膝関節を障害させる事に繋がる事があるのです.このような膝の場合,スクワットに加えて,和式トイレ,正座,いわゆるヤンキー座りは避けるべきです.野球でキャッチャーをされている場合,他のポジションへのコンバートをお勧めしています.脛骨の形状によっても膝の屈曲により痛みがでてきます.Yahooなどで,“脛骨顆部後方回転”や“tibial condyle posterior rotation”と入力して頂きますと,わたしの論文がでて参ります.膝では,是非,3方向のきちんとしたレントゲンを撮っていただきたいと思います.
下の画像の2つの膝蓋骨の形状を見ていただきますとその違いがはっきりとわかります.
膝の動揺性も重要です.靭帯はゆるいだけで損傷がないため,MRIではわかりません.やはり,きちんと診察する事が大事です.膝の内外反,前後の動揺性,過伸展をしっかりと診察しないと動揺性の評価はできません.膝の診察もせずに画像だけ見る医師は膝の専門医としては失格です.
異常がないのではなく,異常が見つけられない場合が多い,事は強調したいと思います.