2024年6月16日(日)
再生医療の可能性
再生医療がだいぶ一般的になって来ました。膝に関して、再生医療の可能性を考えてみました。
高位脛骨骨切り術という手術があります。O脚を矯正するため、骨切りを行い、X脚にする手術です。骨切り術時に関節鏡を入れて観察をするのですが、O脚のため、内側の軟骨がすり減っています。手術時に、軟骨が生えてくる薬があれば良いな〜とよく思ったものでした。半月板切除術という手術でも関節鏡を使うのですが、関節軟骨がかなり損傷している場合が多いのです。今までは、自然と軟骨が回復するのを待つ事しか出来ませんでした。あとはヒアルロン酸の注射を継続するだけです。わたしも1日に50本以上ヒアルロン酸を打つ日が多いです。
しかし、再生医療を適切に行えば、軟骨が再生する可能性はあると考えます。ではどのような再生医療が良いのかを次に考えてみました。
幹細胞がすぐに頭に浮かびます。どんな細胞にもなれる細胞です。幹細胞そのものを薬として使用するとよく表現されていますが、正しい表現ではないと考えます。何故なら、幹細胞は、そのままだと幹細胞のままなのです。幹細胞に何らかの指令を与えて初めて幹細胞は色々な細胞へと分化していくのです。その指令を与える物質を総称してエクソソームなどと呼んでいる場合が多いようです。また、幹細胞を培養した際に出る上清液というのがありますが、その上清液に、エクソソームが沢山溶け込んでいることになります。
ですから、理想的治療としては、膝の軟骨の痛んだ部位に、幹細胞を打ち、軟骨に分化させるエクソソームを振りかける事になります。
残念ながら、今の医学では、まだそのような技術はありません。しかし、自由診療とはなりますが、現在、両者共に使用可能となっております。わたしのクリニックでも、幹細胞と上清液の両者を使えるようにしております。
重要な点は、この再生医療のみを行っても、その効果は期待出来ないという事です。O脚であれば、いわゆる、外向き歩きで体重を外側にかけたり、また、足底板を履いて体重を外にシフトさせる事が必要になって来ます。内側の力学的な負荷が減る事により、再生医療を最大限に活用出来ると考えております。
図に膝の損傷の具合と、対応する治療をアイキャッチに書いてみました。再生医療は、膝関節の疾患に対しても新しい可能性であると考えます。